城殿さんのマナグア通信 番外編:コスタリカ見聞録4 針路をグアナカステへ
眼下にサンホセの町を見下ろすサント・ドミンゴ郊外にあるホテル・ブーゲンビリアを拠点に、周辺地域をその時の思いつきスケジュールで4日間過ごした後、4月8日(木)に最後の訪問地グアナカステ地方への移動の日を迎えた。
まずはここでの日課の定番となった朝の散歩、その後の朝食を済ました後、顔なじみのホテルの関係者一人ひとりに別れの挨拶。といってもつかの間の別れだと皆承知しているので、いたってクール。午後12時10分発の国内便ということで、まずは8日間つつがなく借りた時と同じ状態のレンタカーを返却しにサンホセ市内のオフィスへ。それからミニバスでサンタ・マリア国際空港の端にある倉庫のような建物に控え目に看板を降ろした国内便の発着ターミナルまで送ってもらう。国内便のチェックインは出発時間の30分前までとあるが、便により収容人数が極めて限られているので、早めに済ました。チェックイン時には荷物と一緒に自分の体重も計測。荷物も極力持ちこみにするように。でないと、機種によっては手荷物が積み残しの憂き目に遭うことも。
この日の便は単発のセスナ機で乗客定員が12名の小さめ。幸いこの日の乗客は6名だったので、積み残し荷物のトラブルはなかったようだ。チェックインの後、ほとんど検査らしくない荷物検査をして、待合室に待機。時間帯のせいかひっきりなしに国内各地への便の乗り降りがあり、しかも出発5分前位になって突然アナウンスがあるだけ。同じフライトの乗客が直前になっても数が合わず、係員があちこち探し回る。しばらしくして騒ぎの元が自分であるとは全く示さないそぶりで本人が現れる。パイロットがエンジンをスィッチ・オン。左翼後部座席に陣取り、腰と胸の両方を固定するベルトを締める。
セスナ機は、小回りが利くので瞬く間に離陸態勢。水平飛行になっても高度がせいぜい1,000メートル前後なので、天気が良ければ眼下の眺めも手に取るように見える。同時に、ちょっとした気流の変化にも機体が反応するので、乗り物酔いに弱い人にはお薦めできない。幸い、この日はフライトにはもってこいの好天候で、50分ほどの短い航行を満喫できた。離陸後、大きく旋回し進路を北西にとると、その後は目的地のリベリア付近まで直進のコース。
離陸後しばらくコーヒー畑を見下ろしながら進むと、やがて観葉植物を栽培する一帯(たぶん、パルメーラ辺り)を過ぎる。その後、左手には緑と赤茶けた部分がまだら模様になった乾季の太平洋岸特有の光景が目に入ってくる。目を凝らすと最後方にはニコヤ湾、その左端に湾にせり出した砂州に広がるプンタレーナスの町がかすかに判別される。右手の窓からはモンテベルデの山並が人造湖アレナル湖まで伸びている。この辺りはさすがに乾季も白い厚い雲に覆われている。
徐々に左手のニコヤ湾がテンピスケ川の河口に姿を変えるあたりから、サトウキビ畑が一面に広がってくる。この一帯は、テンピスケ川が上流から運んでくる土壌が堆積し、古くからサトウキビの栽培地として知られる。以前は砂糖生産がもっぱらだったのが、最近ではバイオ燃料で脚光を浴びるエタノールの生産のために作付けされるサトウキビが急増しているという。上空からは灌漑の恩恵で生育ステージがまちまちのサトウキビ畑が幾何学模様を織りなしていた。
この辺りはコスタリカでも指折りのサトウキビ栽培地であると同時に、湿地生態系の保全地域として有名なパロ・ベルデ国立公園やローマ・バルブダル生物保護区などの保護がある。飛行ルートはちょうど後者の上空付近を通過する。この保護区は熱帯乾燥林と洞窟群で知られている。保護区が視界に入ると同時に辺り一面黄色の点が散りばめられていた。コルテサ・アマリーリャと呼ばれるマメ科の樹木だ。この樹種はサンホセの町で満開だった薄ピンク色の花をつけるロブレと同じTabebuia属の仲間で中南米各地で様々な名前で呼ばれている。ブラジルではイペ、パラグアイではラパーチョと呼ばれ、いずれも国の木か花である。ニカラグアでも同じ種類を見かけたが、もっぱら農村部でのことが多かった。遠目には樹木全体が鮮やかな黄色に包まれているので、一目瞭然である。そんな目立った存在が辺り一面にある光景は初めて目にした。
上空から見た一帯には以前コスタリカに滞在していた頃には良く訪れたところだが、陸上からは視野に入ってくる景観は限られており、今回のように上空から遮るものなく一望のもとに見渡すことのできる位置から眺めたのは初めてである。カメラでは黄色い点の集合にしか見えないが、目いっぱい望遠にして撮ると一本一本がコルテサ・アマリーリャである。何とも壮観である。そんな光景に感動していると、やがてセスナ機は着陸態勢に入り、いっきに滑走路に滑り込んだ。
2007年8月?日に米国ヒューストンから直行便で当地に乗り込んで以来の訪問だった。グアナカステ県の都リベリア市の中心から20キロ少々の距離にあるダニエル・オドゥーベル国際空港は、いまや米国本土やカナダの各地から直行便が乗り入れる国際空港である。国際空港に格上げになったのはほんの10年ほど前のこと、それ以前はニコヤ半島のリゾート地への地方の拠点にすぎなかった。コスタリカの観光立国としての知名度が高まるにつれて、国外からの観光客も急増し、いまや空港ばかりかその周辺には名だたる有名ホテルが建設中で、リベリア市街地も牧畜集散地から国内屈指の観光拠点の一つに大きく変貌を遂げている。金融危機がコスタリカにも及んでいるということであったが、この町を見る限りそんな暗い影は微塵も感じられなかった。
空港ターミナルの直前でエンジンを止めたセスナ機のステップを慎重に降り、いつもなら2月くらいに勢いを弱めてしまう北東からの卓越風で押し倒されないように体を前のめりにしてなんとか建物の中に入った。出口には約束通りレンタカーの社員が出迎え、2キロほど離れたオフィスへ運んでくれた。ここでは、サンホセのレンタカー会社で味わったようなトラブルもなく(前もってそのようなことがあったことを先方に伝えておいてくれたおかげで)、すべて手続きを完了。今回は私がマナグアで乗りなれている車種と同じダイハツ・テリオスを調達。リベリア市内の馴染みのレストランで腹ごしらえした後、北西40キロのサンタ・ローサ国立公園を目指した(第4回完)。





















